Mikiyoshi1986

小早川家の秋のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

小早川家の秋(1961年製作の映画)
4.7
昭和の名女優・原節子さんが逝去されてから今日で丸2年が経ちました。

彼女のキャリアの中でも小津安二郎監督の作品には並々ならぬ思いがあり、
小津監督の死去と同じくして原さんも表舞台から姿を消すほど、彼の影響は多大なものだったのだと思います。

小津監督が亡くなる2年前、珍しく松竹ではなく宝塚映画製作・東宝配給によって制作された「小早川家の秋」は
小津監督と原さんの最後のコンビ作品となり、小津ファミリーや東宝豪華キャストが勢揃いして家族の群像劇を描きます。

関西を舞台に情緒ある古き良き日本の風景を映し出し、名優たちのユーモア溢れる名演技も尽く光り輝く逸品。
本作ほど関西弁が美しく、雅に感じる作品もなかなかないのではないでしょうか。

それぞれの生き方や迷いを照らしながら人間の死生観を炙り出し、
「人は一度きりしかない人生を自身の意思に則り、いかに悔いのないように生きるべきか」を強く訴えかけます。

それは晩年の小津が死期を敏感に感じ取った彼なりのメッセージのようでもあり、
また本編の原さんの最後の選択は、まるで自身の女優としての今後を予見しているかのよう。

また小津晩年の3作品にはすべてに「秋」が付きますが、
瑞々しく生命力に溢れた夏に終わりを与える秋は、あらゆる別れや物事の終焉を意味するもののようにもとれるのです。
Mikiyoshi1986

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