ベビーパウダー山崎

シー・オブ・ラブのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

シー・オブ・ラブ(1989年製作の映画)
4.0
靴屋で金持ちのチンピラと対峙するアル・パチーノが眼力だけで相手をビビらすくだりが最高。浮ついた物語だと勘違いしている客に向かって見せる厳しさ、恐ろしさ、ハロルド・ベッカーは「映画」をチャラチャラさせない。
パチーノとエレン・バーキンのラストがなぜかピンク映画ばりのゲリラ撮影、歩きながら会話する二人を通行人が普通に見ているしパチーノにぶつかってくるオッサンまでいて、そのチャレンジングなリアルが作り込まれた虚構を超えてグッと来たりもする。エンドロールで流れるのはトム・ウェイツの「シー・オブ・ラブ」。マイケル・ルーカーはもちろん『ヘンリー』ありきのキャスティング。
サスペンスの土台にラブロマンスもコメディも入れ込み、回り道して真相へ。このごった煮な感じは『ブラック・マーブル』(傑作!)とよく似ている。こういった映画を夜深い時間に映画館でひとりぼんやり眺めていたいと常々思う。