クロスケ

打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?のクロスケのレビュー・感想・評価

4.8
【再鑑賞】
夜空に煌めく花火、青空を反射するプールの水面、燦々と降り注ぐ太陽の日射し、夕暮れの爽やかな風にそよぐ草木などのイメージが、少年たちの淡く切ない物語を瑞々しく彩ります。

ノリミチを始めとする少年たちが、年相応に無邪気な遊戯にかまけているのに対して、奥菜恵が演じる少女ナズナは、家庭環境の複雑さもあってか、大人の階段を上るのを幾分か急いでるかに見えます。そんな、目一杯に背伸びしてみせる健気な奥菜恵が忘れがたい印象を残します。

ノリミチとナズナが学校のプールに忍び込む夜のシーンは、ブルーに染まったプールの水とライトに反射してキラキラ光る水滴が神秘性と幾分かのエロティシズムを漂わせます。
どちらの運命を辿っても、新学期になればナズナはノリミチたちの日常から姿を消してしまうわけですが、その予感を微かに感じ取るノリミチの背中越しにナズナが彼方へ泳いでいくショットは、岩井俊二のフィルモグラフィーの中でも屈指の美しさです。

因みに、作中に登場する少年少女たちと私自身は同世代です。スラムダンクの最新巻、ヴェルディ川崎と横浜マリノス、昇竜拳に波動拳…彼らが口にするフレーズの数々についつい反応してしまいます。観るたびに、三十年近く前の夏の日々が瞼の裏を去来して感傷的になってしまいます。
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