1993年に企画物のドラマがTVで放送されたのが好評だった為、1995年に劇場公開された作品。
岩井俊二監督の作品は、気になりながらもクセが強いんだろうな、、と何となく避けていた。
短編だし、わざわざ借りて、、と思うとハードルが高いけれど、動画配信なら!と観てみることに。。
が、最初の画を観て、ダメだこれは。。とガッカリ。どこにでもいそうな小学校6年男子の日常…。
こんなのが観たいんじゃない!
それも、この子声がカッサカサ。。
その感覚はしばらく続き、期待外れかも、と思いながらも観続けていたら、、
いつからだろう?
引き込まれていったのは。。
やっぱり、なずな(奥菜恵)が出てきてからかな。
既に完成した大人のような雰囲気をまとった彼女に目を奪われる。
男子達のしょうもない会話は、本当にこんな感じで、女子に比べて2年、下手すると3年くらい幼いんじゃないかなぁ。。
身長も大人顔負けに170㎝くらいの子もいれば、やっと150㎝くらいの子もいるのが6年生。
親が離婚するという複雑な事情を抱えているなずな。ただでさえ同学年と思えない精神年齢差が、更に増幅される。
典道(山崎裕太)や裕介(反田孝幸)とは、まるでお姉さんと弟みたい。
誰が言い出したのか、"打ち上げ花火は下から見たら丸いのか?横から見たら平べったいのか?"を、地元の花火大会の日に灯台まで行ってそれを実際に確かめよう!となった典道・裕介を含む同じクラスの男子5人組。
その日、なずなはプールで競争に勝った方(典道と裕介のどちらか)と秘かに駆け落ちをしよう、と考えていた。。
設定とか言葉遣いとか、岩井監督独特のクセがやはりあって(小学生女子が男子に"キミ"とか言わないよね…)、時々うーん…となるセリフや場面もあるものの、キラッと光る演出だったりシーンもあって、だんだん惹きつけられていくのを感じた。
駆け落ちの意味もよくわからない典道だが、根が単純で優しくなずなに引っ張られて駆け落ちごっこに付き合うことになるのだが。。
花火を見上げるポカーンとしたアホ顔の典道と"俺は裏切らないよ。"となずなに向かって言うシリアス典道はあまりにも違い過ぎて、同じ子なのか⁉︎ と思わずにいられない笑
そのアンバランスさが絶妙!
灯台を目指す男子グループの一行が、くだらないことを喋りながら歩いていくのも楽しい。息子達が小学生の頃、友達と話してるの聞いてたらこんな感じだったなぁ。。
そして、夜のプールのシーン!!
Remediosの"Forever Friends"が、一気に時が止まったこの世界観を加速させる…。
なずなの少女と大人の間を揺れ動くちょうど今、この瞬間!
気づいたら、涙が溢れていた。。
よくわからないなりにも女の子を守ろうとする男の子の優しさ、真っ直ぐさ。
男の子の優しさに甘えながらも、何とか自分の運命を受け入れようとする女の子の寄る辺なさ、健気さ。
友情と恋と花火。
この夏のことを思い出して、これからもなずなは強く生きていくだろう。
この夏のことを思い出して、典道は時にどうしようもない想いに身を焦がすだろう。
懐かしさとあったかさと、切なさと。
誰もがいつかの日に感じた思いが胸に迫る。
岩井俊二監督、女の子の一番瑞々しい時の切り取り方が上手過ぎて。。
今更だけど、追いかけたくなった!!