ShojiIkura

大菩薩峠のShojiIkuraのレビュー・感想・評価

大菩薩峠(1957年製作の映画)
3.6
 冒頭だけ出てくる大菩薩峠。おじいちゃんと孫のほのぼのした会話のあと、ああ、この人が主人公かなというオーラのお侍がなんの前触れもなくおじいちゃんを切り捨てる衝撃のオープニング。この男、普段はたいした信念も持たない浪人だが、一度剣を握ると相手に対して容赦をしない。正式な試合で倒した相手の弟に恨まれるのはかわいそうな気がするが、冒頭の辻斬りのみならず人を切ることに躊躇がない日頃の業を思えば、人から恨みを買うのもやむなしか。
 その主人公より厄介なのがお浜。自業自得なことだらけなのに全て机のせいだと責め、追い詰められられると死んでくださいとか死にますと言ってくるメンフェラな女だ。彼ら二人の子どもはその二人から離れての生活となるが今後が心配だ。
 唯一の心暖まる存在のお松は不幸なことばかりで可哀相で仕方がない。今後幸せな未来があるのだろうか。
 そのお松とどういう関係になっていくのか気になる兵馬は、正式な試合で倒された兄の対戦者を仇と追うのはどうかと想うが、ごく実直な思考が目立ち、私たちの視点となってくれているようだ。
 最後の方になってこれは幕末の話なのだなと気づく。話の展開が早く理解が追い付かないときも度々だが、心を病んだ人がたくさん出てくる今風のキャラたちがストーリーを予測できない方向に導くのが魅力なのかもしれない。
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