Monisan

過去のない男のMonisanのレビュー・感想・評価

過去のない男(2002年製作の映画)
4.1
観た。

敗者3部作の2作目。
カウリスマキは癒さされる。肩の力がすっと抜けるような感覚。尊い。

しかし、これ本当に2002年公開の映画かと。勿論良い意味と少しの皮肉もあるけど。本当に作りたいものが一貫している。
暴漢に襲われるシーンとか、何度もカウリスマキ作品で観た気もする。

記憶を無くした男が、コンテナを紹介されてからメキメキと存在感を増していく様子が滑稽だけど愛らしい。
カティ・オウティネンは今回は救世軍に勤めている。相変わらず、低いトーンで不幸せのぎりぎりライン上を安定して暮らしている。
男はハンニバルも仲間にして、ジュークボックスのおかげでバンドメンバーも引き入れ、イルマという彼女も出来き、名前は思い出せないまま充実した暮らしを手にしていく。
溶接工会社のボスは、浮き雲の時のレストランの理事長さんかな。ここでも全面的に良い人。

銀行強盗も明らかに悪いやつじゃないけど、名前無ければ拘束されちゃうよね。舌足らずな弁護士は優秀過ぎて笑える。
銀行強盗は会社の社長で、その最後の頼みを聞き、従業員の不払いの給料を配りにいく男。2人とも誠実。

その事件がきっかけで、身元がわかる。妻からの連絡。しかし捜索願いは出ていないと…
彼女との辛い別れ。ハンニバルは彼女が面倒見るのね。良い犬。
そこからの妻の言い分。渡りに船だよね。とんぼ返りの列車の中で、寿司、日本酒!となっていたらまさかの日本語の歌が。
イスケルマというムード歌謡は今回も歌われていたけど、似ていると言われている日本の演歌がついに。と思ってクレジット見たらクレイジーケンバンド!ホノルル〜♪とか変な歌だとは思ったけど、意外で驚いた。

またもや暴漢と対峙するが、こちとら仲間増えたんだもんね。あの警官風情は結局何者なんだ?

2人の最後の台詞のやりとりが好き。
本当は怖かったの。バカだな。
これで終われるのが流石です。

あとはイルマの初恋だったの、は良い台詞。幾つだよ、と思いつつ。
いやこれ本当に2002年公開か。素晴らしい。

アキ・カウリスマキ、脚本・監督
Monisan

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