ココ

過去のない男のココのレビュー・感想・評価

過去のない男(2002年製作の映画)
4.3
「運が良かったな。普通なら咬み殺されるところだったぞ」

〜きゃわいい犬〜

「犬の名前は?」
「ハンニバル(食人鬼)だ」


カウリスマキの作品では決して裕福な暮らしはしておらず影を落としたような人ばかりが出てくるのだが、暗く廃れたコンテナや寂れたバーの中にパッと現れる鮮やかな赤い扉や水色の壁紙を見ると、その人の心の中に隠れた豊かさのようなものが垣間見れて嬉しい気持ちになる。
彼の色彩は不思議な懐かしさと、目を見張る鮮やかさがありながら空間に溶け込むような優しさがある。特にこの作品は空の色が美しかった。

また冒頭にあるようにシュールでコミカルな台詞回しも彼の作品の魅力だ。ハンニバルって……笑
シャイで不器用なのはフィンランド人の気質なのだろうか、無表情でやり取りして静かにうなづく、用が済んだら振り向きもせず後にする姿は笑いと共に愛おしさも感じられた。

主演の名もなき男を演じたマルック•ペルトラのくたびれた男の哀愁と色気が良い。
寄付されたスーツを着こなした姿を見た時は「見違えたわね」とヒロインのイロナとハモってしまった。拙者黒スーツ黒タイに色シャツ大好き侍。男は黙ってこれを着ろ

カウリスマキの男は不器用で言葉足らずだけどみんな愛する女を大事にする。顔についたごみを取るフリして優しく頬にキスするシーンはとても可愛らしかった。

私カウリスマキ好きだな……街のあかりと希望のかなたも見てみよう
ココ

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