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レオン 完全版のEyesworthのレビュー・感想・評価

レオン 完全版(1994年製作の映画)
4.9
リュック・ベッソン監督が脚本も手懸けたハリウッドデビュー作にしてクライムアクションの傑作。無口な殺し屋レオンを演じたのは同監督と『グラン・ブルー』でも一緒だった名優ジャン・レノ、そして12才だが利発で大人びた少女マチルダを演じたのは今でこそスターの幼きナタリー・ポートマン。最初見た時はナタリー・ポートマンがこの少女だとは思わず、物語が終盤になっても出る気配がないので一体いつになったらナタリー・ポートマンは登場するんだ?と思ったのは恥ずかしい話。そのくらいナタリー・ポートマンは若く、自身のデビュー作にして重要な出世作となった。

序盤から不穏な空気のアパート内で起きたマチルダの一家殺人事件。犯行に及んだのはゲイリー・オールドマン演じるイカれた麻薬捜査官スタンフィールドの一味。それから彼らへの復讐が少女マチルダの生きる意味となり、隣人の殺し屋レオンのもとで暮らし、銃の扱いから暗殺のやり方まで教わるようになる。殺し屋と少女の不相応な組み合わせのパズルは一見不気味だが、そこには他人からは見えない信頼と愛情があり、独特な関係が芽生え始めていた。
レオンという男は過去のある事件をきっかけに己の腕だけを信じ、誰も信用しないことで凄腕の暗殺者として無類の強さを誇る人生を送っていた。そんな彼は自身を常に愛用している植木のように「根無し草」だと表現する。殺し屋に安息の場所などなく、寝てる時も片目を開け、仕事が入ればどんな場所にでも赴くためだ。でも本当は、彼も普通の人のように根を下ろす場所が必要だと感じていたのだろう。それがマチルダであり、彼女を我が子のように教育し、かわいがってお金を残すことで、普通に生活することも夢見ていたのではないか。でもそれは身分不相応で叶わない夢だとわかっているからこそ切ない。
一方、マチルダも家庭内では虐待やネグレクトを受けていたりして、家族への愛情など微塵もないように振舞っていたが、やはり子供は子供なので家族の損失により心に大きな穴が開き、それを埋めるかのように心優しい大人のレオンに愛情を傾ける。
そんな過去にできた大きな穴を抱えた2人が、持ちつ持たれつお互い様の愛しき共犯関係によって欠落を埋めようとする様が美しく、世間的に褒められたやり方ではなかったかもしれないが、あのエンドは彼らにとってそれしかない結実であったように思う。今後レオンはマチルダに見守られながら大きな根を大地に張り巡らせることだろう。
そして何より、とても見応え満載の脚本とガンアクションだった。
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