エソラゴト

レオン 完全版のエソラゴトのレビュー・感想・評価

レオン 完全版(1994年製作の映画)
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80年代中頃〜90年代初めのフランス映画ブームでレオス・カラックスやパトリス・ルコント、ジャン=ジャック・ベネックスらと共にリュック・ベッソンも『グラン・ブルー』『ニキータ』と立て続けにヒットを飛ばし正にフランス映画界のトップランナーを当時ひた走っていた。

今作は監督自身初のハリウッド映画で前作『ニキータ』でチョイ役でありながら強烈なインパクトを残した「クリーナー(掃除人)」を主人公に冠した謂わばスピンオフ的な作品。

前作『ニキータ』同様この掃除人に扮しているのはジャン・レノ。普段は無口で鋭い眼光を放つ冷徹な殺し屋だが、一人映画館で『雨に唄えば』を観ている時の童心に帰ったような表情やマチルダとの一時の戯れでの愛くるしい丸々とした澄んだ瞳はとても印象的。

マチルダ役のナタリー・ポートマンはデビュー作とは思えない半分少女半分大人な難しい役どころを見事に演じていてその後の活躍をこの時から予見する素晴らしく魅力的な演技を披露。(以前にYouTubeでオーディション映像を見たがその時点で既にナタリーのマチルダ像が完成されていたのには驚かされた)

そして最も強烈な印象を残すのは悪徳麻薬捜査官役のゲーリー・オールドマン。この頃は個人的にはデビュー作『シド アンド ナンシー』のエキセントリックなシド役くらいの認知度だったが、今作でのスタン役でのキレっぷりや狂気じみた演技は後の『ダークナイト』シリーズの実直なゴードン刑事とはまるで正反対で、鑑賞当時この人本当にお薬ヤッてんじゃない?と思いたくなる位の尋常ではない振り切れた悪役振りが画面を覆い尽くしていた。


好きなシーンは幾つもあるが…

レオンにとってマチルダが自分の仕事の足手纏いになることが確実なので、寝ている彼女に銃口を向けるも思い止まるシーン。冒頭のマシーンのような冷徹な仕事振りからは想像も出来ない程の人間臭さに胸が熱くなる場面。


「OK言うな!」
「OK」
「よしっ!」
…このやりとりも2人の絶妙な関係性が垣間見れて面白かった。


マチルダの愛の告白にも自身の背負った過去を諭すように語るレオンの哀しげな姿に胸を締め付けられる思い。

そしてラストシーン…。レオンが大事に育てていた観葉植物を土に植え替えるマチルダ。自身が地に足を付けて生きていく事への決意と誓いが垣間見られる切ないラストカットと共に流れるスティングの「Shape Of My Heart」がまた切なさを際立たせていた。(因みに昨年のスティングの来日ライブでこの曲が演奏された時はこのシーンを思い出し心が震えた)