ひでG

ピアノ・レッスンのひでGのレビュー・感想・評価

ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)
4.0
観てたけど、書いてない、書けてない映画を再見シリーズ①

観てはいるけど、レビュー書くためにもう一度観ないとなっ、が何本かあるので、アマプラを中心に二度目の鑑賞シリーズです。

1993年のキネ旬1位、アカデミー主演・助演女優賞をホリーハンターとアンナ・バキンが受賞。
パルムドールも受賞!世界的にも大ヒット!
もちろん、監督ジェーン・カンビオンにとっても、キャリアの代表作であり、公開当時も話題になってたので、観てるんだけど、多分レンタルだったかな、、
正直、初見はあまり良い印象はなかったな、

原題は、「The Piano」邦題の「ピアノレッスン」は、レッスンをくっつけただけだけど、持つ意味や印象が大きく異なる。
僕は初見では、レッスンの部分に印象を持っていかれた感がある。

確かに、お話の中で、エイダとベインズの秘密のピアノレッスンは、重要な場面だが、本作の全体ではない気がする。

本作の主役であり、テーマであるのは、
「The piano」
pianoはエイダの意思であり、声であり、彼女そのものなのだと思う。

この映画は、ピアノ協奏曲だと思う。
複数の楽章で成り立っている。
ポップスのように聴き触りの良いメロディだけでできているのではない。
中には、すぐには入ってこない楽章もあるだろう。

その反面、美しさの極めのような珠玉の楽章もある。

冒頭から25分! 映画史にも残るであろう、
息を呑む名シーンの連続!

遠方から海を渡って運ばれて来たピアノが、浜辺に放置されるショット!

ベインズに連れて来てもらい、久しぶりにピアノを弾く恍惚のエイダ、
それに合わせて踊れ娘フローラ

2人が砂に描いた砂浜の線に、ベインズの足跡の線が繋がっていく、、
こんな美しい序盤はそうざらにない!

美しく、計算され尽くされた画面、これからの2人の運命、
浜辺に残られたピアノと見知らぬ土地に連れてこられた母と娘、

夫スチュワートの人物造形も繊細で実に丁寧だ。
彼は彼でエイダとコミュニケーションを取ろうとしている。優しい声掛けはしている。
ただ、エイダの発する真の声には応えようとはしない。

そう考えると、黒鍵のメッセージも、クライマックスのあの展開も、なるほど!と気付かされる。

この作品は、2人の秘めた恋とか、不倫を扱ったもの、つまり「ピアノレッスン」だけを描いたのではなく、
言葉を失い、それをピアノを弾く時しか表せられない女、
娘フローラに手話通訳をさせているのだが、
彼女の女性としての本能は、手話でなく、
手探り、手の感触でしか表せられない。 
そう、ピアノの奏でる時の如く、、

この作品の色彩は、独特だ。青く、濃く、
沼地や奥地の臭いが漂ってくる。

それが、ラストのラストに、白く、淡く、
別世界の空気を醸し出す。

そっか、こーゆーラストだったのか、
ピアノ協奏曲は、静かな穏やかな旋律の楽章で閉じられていたのだ。
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