物語もさることながらピアノによる劇伴が素晴らしいです。画面以上の訴求力があります。『楽しみを希う心』には、それのみで作品を成り立たせるほどの力を感じます。
ヒロインの蠱惑が徐々に漏れ出る表現も印象的です。ファム・ファタルのような魅惑がありつつも一途さのある可愛げが魅力的です。練習中の場面には惹きつけられます。
最後の水面への浮上は彼女自身の精神的な復活を感じさせる力強さがあります。そして終幕間際、彼女の指先が義指となり打鍵する場面は序盤の対比として、彼女の内面的変遷を示す静謐さを感じました。
〝観る〟ではなく〝聴く〟という言葉が近い作品です。