チェさん

ピアノ・レッスンのチェさんのレビュー・感想・評価

ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)
3.8
「一回来るごとに鍵盤が一つずつ君のものになる」

名作って、やっぱ名作なんだな。
絵画みたいな陰影の映像にピアノ音楽が合わさって、圧倒的アート体験。
物語も、現実的に考えると絶妙にキモくて共感不可能なのになんか没入してしまう魅力があるし、すげえとしか言いようがない。
登場人物全てに共感できないし、全員好きになれないけど、心震える映画って初めてかもしれない。
この時代に自分の意志で愛を選ぶことがどれだけ難しいかと想像するとエイダにはぎり心を寄せられるが、あまりに男性キャラがキモすぎてそりゃそうなるわなの域を出ないのが残念。
「一回来るごとに鍵盤が一つずつ君のものになる」って冷静にどんだけ引き止めたいんだよって思ったら、そのやわやわな精神に涙出てきたし。
意志の強すぎるけど何も持たざるエイダ、権力だけでやわやわメンタルな男性陣…だからこそ、為せる意味わかるけどわからんアート体験、これぞ映画か!って感じ。

男の愛は名前をつけて保存、女の愛は上書き保存って聞くけど、エイダは上書き保存だったのかな。フォルダの奥底に隠して名前をつけて保存にも思える。あの終わり方、余韻がいいね。
チェさん

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