海

ピアノ・レッスンの海のレビュー・感想・評価

ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)
-
失ってはじめて永遠になる。海岸で天使のように舞っていた少女、わたしを見つめるときのあなたの突き刺すように真っ直ぐな瞳、持て余した情熱は、指先が痺れるまで鍵盤を叩き続けてもなお、語り尽くされることはない。寝息、笑い声、泣き声、波にも似た旋律、わたしを呼ぶ声、砂がこぼれるような血流音、気が遠くなるほど美しかったあなたの心臓の音、いつかすべてが永遠になる。わたしのこの体と共に。

To see a World in a Grain of Sand
And a Heaven in a Wild Flower,
Hold Infinity in the palm of your hand
And Eternity in an hour.
(ウィリアム・ブレイクの「無垢の予兆」という詩の書き出しの4行。)

わたしは幼い頃、声が出なくなったことがある。ピアノをやっていた母が一番聴かせてくれたのは「愛のロマンス」だった。本作は一人の女性の話であり、一つの純愛の話で、そしてまた母と娘の物語でもあるのだと思う。
失われたものの中に、手のうちにあるすべてが宿る、手放したものの中に、夢に見るすべてが宿る。その逆もまた同じで。

一粒の砂に世界を
一輪の花に天を見る
あなたの手のひらは無限を握り
ひとときに永遠をつかんで
海