真世紀

大人と子供のあいの子だいの真世紀のレビュー・感想・評価

大人と子供のあいの子だい(1961年製作の映画)
4.0
単行本化された中学生渡辺照男の日記をもとにした映画。浜田光夫演じる中学生の家は父親が飲んだくれでろくに働かず。家計を支える母は心臓が弱く、社会人の姉(高田敏江)はちょこちょこ実家に顔を出して援助してくれるけれど喀血、療養暮らしとなり、会社休職。それでも二年間はお金もらえるけどその先はどうなることやら。家には祖母、幼い弟妹らもと食べさせる口は多い。生徒会の役員になったり、成績も全国レベルで優秀ながら自分も中学卒業したら高校に行かずに働かなくてはいけないのかと貧しさに悶々。学校の先生や親友の親(宇野重吉)などが気にかけて進学についても手を打とうと動いてくれ、全日制高校への進学の道も開けるも。浜田のナレーションで原作が引用され、ちょっと周囲に突っ張ってみせたりもする少年の心情が語られる。

主人公が気にする同級生のかわいい子に松原智恵子さん。デビュー年の出演作で初々しい。彼女も母親が病に倒れて代わりに新小岩駅改札前の売店で売り子さんに。なお、なにぶん、主人公、中学生なもんで親友が気を聞かせて会話の機会を作っても走り出してどこか行っちゃったりと男女交際ははじまらずであります。

酒のつまみに久々に日活作品でも観るか、69分と短いしなぐらいな感覚で軽くセレクトしたんだけれど、案外、観いっちゃいました。この作品の子供のようにあからさまでなくとも、今も子どもの貧困は存在どころか、コロナ禍でより深刻。ヤングケアラーのように最近まで可視化されてこなかった問題もあるし、どこかでこのような気持ちで過ごしている少年少女がいるんだよなと。

そして、この映画を観たらきっと気になる主人公というか原作者のその後ですが、他の人の感想有るかなとTwitterで検索したら、なんと弟さんのツイートを発見。

「私も一度だけ映画館で観た記憶があります。
映画の脚本は殆ど脚色された内容でした。
駅の場面は新小岩駅で、当時の駅舎は木製で券売機もありません。
その後兄は新宿高校定時制を卒業、同級生と結婚、愛知県の日本福祉大学に就職、理事長で定年退職、愛知県知多郡で健在」

とのこと。貧しさに負けなかっんだなと胸が熱くなる。
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