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大人と子供のあいの子だいのotomisanのレビュー・感想・評価

大人と子供のあいの子だい(1961年製作の映画)
4.1
 中学生の日記がもとのこの映画、人生沈んで浮いてまた沈む。分かっちゃいるけど中学時分からそんな事に気が回ってしまうのがいい事なのかよくない事なのか。いっそ沈みっぱなしと自棄を起こしてぐれちまうほうが楽かもしれない。
 誰でも知ってるだろう、ほんの一年後、キューポラのある街が公開されるが、こちらは知る人も無いだろう有様だ。観ればなんでかよく分かる。
 人はいいけど呑んだくれて父ちゃん、仕事はさっぱり。姉ちゃんは肺病で隔離療養。有給病欠2年は助かるがその後はどうなる?弟妹にばあちゃんもいて母ちゃんは心臓が弱ってパート働きは心配。いや働くどころのはなしか?ついでに父ちゃんは転業して板橋に転居。沈む話ばかりでいつ浮くんだ。
 とおもったら、中学の先生も級友の親父さんも高校通いを助けてくれるし、全国模試上位1%内、大学進学も叶うかも。でもだめだ。自分一人、夢のような寄宿先家庭で理想を育んでも現実の前にすぐ潰える。はじめに自分のために生きて働いてと宣言した平井君、おわりには、人への頼みを断って、希望を持つと、負けないぞと書き記し、挨拶ひとつを訝る智恵子の見送りを背に夢の地を発つ。板橋の家族のもとにたどり着いても、父ちゃん、平井君の決心を怒ってはくれないだろう。
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