大道幸之丞

ブリキの太鼓の大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

ブリキの太鼓(1979年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

同じ監督の「魔王」の理解を深める目的で鑑賞。

本作はともかくオスカル役のダーヴィット・ベネントの存在感とキャスティングが成功の鍵だと言える。

長い間カテゴリは「フリークス」に含められているカルト作品。

精神病院に入院中のオスカルが自身の半生を看護婦に語る形式で物語は進む。冒頭から構成が「この映画は普通の物語ではありませんよ」という雰囲気を作り出している。「自由都市ダンツィヒ」での物語。

出生時にすでに成人の冷めた思考を持ちながら生まれてきたオスカルは父親アルフレートが、3歳になった時、ブリキの太鼓を買い与える約束をしたことで3歳までは成長する事に決める。そして3才の誕生日に故意に事故を装い自ら3歳で成長を止めた。

3歳で成長を止めると常に保護者がいて自ら責任を取る必要もないし、子供の嫌な部分——すなわちなんでも欲しがり自分本位のわがままを通せるということ。興が乗るとブリキの太鼓を鳴らしうるさく気障りだ。

そして何かと余計な事をするために、巻き込まれて周囲の人物が亡くなったりする。

またオスカルは自身の悲鳴でガラスを割る能力もあり、サーカス団の小人芸人団から熱烈なスカウトも受けるし、家出をして参加したこともある。しかし基本女にだらしないオスカルは同じサーカス団の小人女性に手を出すが、不意な事故で死なせてしまいサーカス団を離れた。

冒頭からマツェラートとヤン・ブロンスキがアグネスと三角関係で、一応はマツェラートとアグネスが夫婦の体裁をとるが、何かと目を盗んではブロンスキとアグネスは逢引を繰り返す。しかしどうやらブロンスキとの子を宿してしまい。元々オスカルの扱いだけでも頭痛の種だった事もあり、自らを追い込んで自死してしまう。

まもなく家事手伝いの16歳のマリアを雇うがマツェラートに言い寄られ子供を産まされる羽目になる。オスカルもマリアを「初恋の人」とし子供の体ながらマリアに性交を試みる場面もある。ちなみにアグネスとマリアはともに美しい女性だ。

——とまあ戦渦の混乱や事態の進展の中で振り回される人々とそこに寄生するように存在するオスカルは最後の最後に自らの保護者をすべて失ってしまう。

マツェラートに依頼されうなぎを取る漁師が餌に馬の頭を使い。海から引き上げると馬の頭のあちこちからうなぎがニョロニョロ飛び出してくる。それをみていたアグネスは嘔吐する。これはこの映画で強烈な印象を与える場面のひとつだ。

小人、戦争、ユダヤ人差別など様々に入り組んだ背景は濃密で没入感がある。実に見応えのある作品だった。