Monisan

祇園の姉妹のMonisanのレビュー・感想・評価

祇園の姉妹(1936年製作の映画)
4.3
観た。

こりゃ面白いな。
商売女に翻弄される阿呆な男どもの姿は普遍的で現代にも通ずるものがありまくる。

商売に失敗した古沢は、かつてお世話をしていた芸妓・梅吉の住処に居候する事に。同居する妹のおもちゃ(山田五十鈴)はいきなり爺さんの面倒をみる姉に呆れつつ、露骨に嫌だと伝える。

とにかく京都弁の会話が小気味良い。
関西ならではのユーモアある言い回しと言葉の率直さというか、直球具合。
ぶっちゃけとか、阿呆くさみたいな今でも多用する言葉が出てきたのも面白かった。

義理に拘る古風な姉と違い、おもちゃはなんとか現状を打開しようと画策する。
まずは自分に惚れてる、呉服問屋の番頭木村に言い寄り、反物をねだる。
そして景気の良さそうな骨董屋の主人が酔っ払った隙に自宅へ車で送るふりをして、個室の小料理屋のような所へ逆に連れ込む。そこで梅吉が惚れていると嘘を伝え、古沢を故郷へ返す費用をせしめる。

古沢は金さえあれば、と。さっさと姉妹の家を出て行く。故郷へ帰りはしていないけど。

骨董屋をうまく梅吉に目を向けさせつつ、かたや反物をくすねた木村は主人の工藤にお叱りを受け、おもちゃに相談へ。
おもちゃは抗議に来た工藤を丸め込み、あなたさんみたいな人が世話してくれたら良いのになぁ、なんてしなだれる。男って馬鹿だよねぇ。まぁ自分でもその気になってしまうだろけど。
工藤と木村と鉢合わせた時のおもちゃの言動も最高。怒るしかない工藤に追撃するように無表情で、どたぬき結構、反物やそこらで色男ぶってからにしょうもない、気つけやこれからもある事でっせ、と。痛快すぎる。

古沢を追い出し、木村も用済み、反物はそのまま。ただ故郷へ帰ってない古沢がまだ町にいる事を知った梅吉は、妹への怒りもあり彼の元へ。おもちゃは全く理解できない。

とはいえ、ここまではおもちゃの策略通りに大筋進んではいる。
と思いきや、まさかの男どもの逆襲が始まる。車で迎えに来られたおもちゃは、骨董屋を送った時の運転手だと気づく。そしてその車に乗り込んでいた木村の逆襲だったのだと理解する。おもちゃは身の危険を感じ、車から飛び降り怪我をする。
見舞いに行った姉は、その後、古沢が仕事を用意できた妻の元へ行った事を知る。あっさり裏切られてしまったのだった。

最後は、ベッドに横たわるおもちゃの、なんで芸妓みたいな商売世の中にあるんや、ほんまにこんなもん無かったらええねん。で終わる。
捨てられた梅吉に、姉さんどうしたん?そんな不景気なもん目から出して。という台詞も凄かった。涙をそう表現するのか…

この映画は紛失してしまった30分ほどのフィルムがあるとの事。何処を描いたフィルムだったんだろうか。
勝手な推測だけど、思い通りにいったおもちゃが謳歌したり、首になった木村の苦労とか、オチへの落差をつける部分なんじゃないかと推測する。知らんけど。
観てみたいな、無くなったフィルム。

いやでもこの69分でも十分に楽しめる。
全キャバ嬢と、キャバクラに通う男子に観てほしい普遍的なテーマの映画かな。
面白い。

溝口健二、原作・監督
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