そうそう、これこそ自分の好きなイギリス!
例えばビートルズやディケンズの様に、どんなに時を経ても、どんなに自分の心が複雑にねじ曲がってしまっていても、いつでも心にすっと染み込んでくる清澄なもの。このおおらかさこそ、イギリスから受け取ることのできる至高の贈り物だと思っている。
ダニエル、メロディの二人はもちろん、オーンショー、出っ歯の太った女の子だって、登場する子供達は皆キラキラと輝いてる!
口数の少ない二人だけど、だからこそ二人の瑞々しい心象風景がそのまま映し出される様な素晴らしいシーンがいくつもあって、その度に遠い昔がフラッシュバックするように胸が締め付けられる。金魚を掲げて町へ繰り出すメロディ、雨の中鞄を傘にして寄り添う二人、そしてラストシーン。
この映画を観る大人たちは、涙ながらに訴えるメロディの姿に、彼女を見守る家族と全く同じ表情になるのではないか。彼女の切実さに触れた時、かつての自分ではなく、今の自分にも関わることとして、映画はまた違った様相を見せ始める。この映画はただ自分の初恋を思い出しノスタルジーに浸るだけの映画ではない。過ぎ行く季節、死にゆく人間、その間でこの瞬間生きていることの尊さについて深く感じさせられるような、ダイナミックな時間の流れを描いた映画だ。そんな深遠ともいえるようなテーマを含みながらも、しかつめらしいところは一切なく、ビー・ジーズの爽やかな風の吹きぬけていく様な歌に乗せ、二人の小さな恋が瑞々しく描かれていて、そんなところに自分はイギリス的といいたくなるような愛すべき精神を感じてしまう。
何度でも見たくなる、名作!
ついでに、キリスト教の授業ではユダヤ人が自習になったり、子供達にとって「ヘイ・ジュード」はもはやダサい曲の象徴だったり、この時代のイギリス文化を垣間見れるのもまた一興。