うめ

小さな恋のメロディのうめのレビュー・感想・評価

小さな恋のメロディ(1971年製作の映画)
3.4
 題名だけ知っているけれど、観たことないなぁ〜…ということで鑑賞。舞台はロンドン。11歳のダニエルとメロディの恋愛を、学校生活の様子を交えながら描く。

 今作は製作国のイギリスやアメリカではヒットしなかったそう。確かにアメリカはこの頃、「アメリカン・ニューシネマ」の時期。今作が制作されイギリスで公開された1971年のアメリカの興行成績ランキングを見てみると、『ダーティーハリー』や『フレンチ・コネクション』、『時計仕掛けのオレンジ』といった今作とは全く異なる作品がヒットを飛ばしている。政治的、社会的状況から大衆に受け入れられなかったのではないかと推測される。一方、日本では今作が大ヒットしたようで。今でも根強い人気だとか。…なるほど、アメリカとの違いがくっきり出ています。

 確かにダニエルやメロディは可愛いし、大人に対する反抗はもしかしたら時代を反映したものだったのかもしれない。だが、全体に「のほほん」とした空気がどうも私には受け入れられない。どんなシーンでも最後にはビー・ジーズの曲で「のほほん」としてしまう印象を受けてしまったのだ。(もちろん全部がそうではないだろうし、ビー・ジーズの曲自体は素晴らしい。)まるで曲ごとのミュージック・ビデオを観ているような気分になった。そのような演出のせいか、何を強調したいのかいまいちわからないし、ストーリーの緩急も感じられない。ただ、ただ子役が可愛い印象しか残らなかった。

 だが、これは私の問題もあるのかもしれない。この可愛らしい恋愛をそのままで受け入れられない性格が出来上がってしまったのだろう(笑)なので、私は今作を途中から「こういう恋愛や経験も無いし、あまりに私とかけ離れているなら、もう一種のファンタジーだと思って観よう」と決めて観ていた。(実際エンディングの曲でもあったように、今作は「子どもの世界」だけを表現しており、世相などはほとんど反映されていない点ではある意味、現実社会から浮いた世界を形成している普遍的なファンタジーと言えるのではないだろうか。)もう少し若い頃に観ていたら、感じ方も違ったのかもしれない。

 キャストの可愛さには文句なし。特に良かったのは、ダニエルの友人トム・オーンショーを演じたジャック・ワイルド。可愛さの中にも大人びた雰囲気が感じられて良かったし、それがやんちゃな子という設定にも合っていた。またダニエル・クレイグ版007のビル・タナー役で知られているロリー・キニアの父親ロイ・キニアが、メロディの父親役として少し出演していたのには驚いた。さすが親子、ロリー・キニアと顔が似ている。

 どろどろしていない、純真で可愛らしい恋模様を観たい人にはお薦め。共感できずとも、子役たちの笑顔にきっと癒されるはず。
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