塔の上のカバンツェル

炎の戦線 エル・アラメインの塔の上のカバンツェルのレビュー・感想・評価

3.5
第二次世界大戦下、かの有名なエルアラメイン戦線を戦うイタリア軍を描くイタリア映画。

イタリア版、「スターリングラード」(1993年独製作)をやろうとしたんじゃなかろか。

地平線の彼方まで続く砂漠の荒野で、渇き、飢え、弾薬の欠乏に苦しむイタリア軍兵士たちが自然の厳しさに身を焦がしながら、劣勢を戦う姿、という筋書きが「スターリングラード」から影響を受けたとみていいでしょう。

戦闘シーンもそこまで激しくなく、対峙する英軍からの迫撃砲や空爆に右往左往しながら、日々の生存への闘争に困窮する軍隊…という。

イタリア軍装は、戦車類や砲はほぼ出てこない、これは劇中が南部戦線なので司令部からも見捨てられ、物資に困窮している地域だから…と、一応の弁解はあります。

対して、モンゴメリーの英軍は戦車が恐らく現用レオパルドか、パットンか…多分イタリア軍から貸してもらった車両なので、クルセイダーとかは出てこず。

あと、ドイツ・アフリカ軍団は全くと言っていいほど出てきません。
まぁ敗退し続ける南部で描かないという配慮(?)なのかもしれませんが…。

イタリア軍周りで言えば、黒い羽根が目立つベルサリエリ兵が結構出番多し。


大自然の猛威に呑み込まれながら、生にしがみつく希望を捨てない人間模様と、消えていったイタリア軍兵士のための映画なので、とやかくは言う必要はないでしょう。

ただ、お勧めするなら、同じテーマで5000万倍この世の地獄を見せてくれるドイツ製作の「スターリングラード」を観るのがよろしいかと。


【2023.04追記】

見返して観ると、塹壕でひたすら待機してすり減っていく兵士達の営みと、補給も戦略も碌に当てにできないイタリア軍の撤退戦の悲壮さはかなり印象深い作品と受けた感想が変わった。
ロンメル指揮下で多少なりとも指揮と戦闘力を復活した南部イタリア軍と違い、北部戦線のイタリア軍の忘れられた戦場での、まるで火星に取り残されたかのような孤独が一層深まる砂漠の戦場だった。