バランシーン

憎しみのバランシーンのレビュー・感想・評価

憎しみ(1995年製作の映画)
3.6
本作の公開が96年。その2年後にフランスはアルジェリア移民の子、ジネディーヌ・ジダンの活躍でワールドカップを取る。
その代表にクリスチャン・カランブーというニューカレドニア出身のMF(レアルでプレーしていた)がいた。カランブーは試合前の国歌斉唱で頑なにラ・マルセイエーズを歌わなかった。

フランスの移民2世の社会統合問題が本作の背景としてある。フランスで生まれ、フランスで育っても心からラ・マルセイエーズを合唱出来ない層が当時相当数いたのだ。そして本作のように閉塞が閉塞を生み、憎しみが憎しみを生むこととなる。
粗いながらも徹底して乾いた映像は、どこか主人公の3人組に過度な共感を寄せることからも突き放し、「まだ大丈夫」の97分を経て、問題の98分目=着地に至る。最後に銃が彼に回ってくる運命の妙、そして…。ジダンの一発のヘッドが理屈ではなくフランスの社会統合の一助になったように、本作も感覚的に当時のフランスの絶望的な負の連鎖の現実を提示している。
ラストの切迫感と怒りは、僕にはとても熱い結末と映った。
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