D

憎しみのDのレビュー・感想・評価

憎しみ(1995年製作の映画)
5.0
『壊れた社会に生きる、行き場のない若者たちの憎しみ』

フランスと聞くと、華やかな街並みや丁寧な暮らしをする人々を想像してしまうけど、そんな固定観念をぶち壊してくれたのがこの「la haine」でした。現代のフランス社会と、警官らによる国家権力の乱用を猛烈に批判していると感じます。まさに「憎しみ」の連鎖を描いた映画です。
初見で見終わった時、あまりの衝撃で身体が動かず、ただただ呆然としていたのを覚えています。
大まかなストーリーは、パリ郊外に住む移民出身の3人組(ユダヤ系移民のヴィンツ、アラブ系移民のサイード、アフリカ系移民のユベール)の24時間を描いたお話です。警官が落っことした拳銃を、ヴィンツが拾って来たところからどんどん物語が進展して行きます。
ストーリーが面白いのは勿論のこと、la haineはとにかくカッコいいシーンが多いです笑
特にお気に入りなのが、ヴィンツが鏡に映っている自分に向かって指でっぽうの引き金を引くシーンと、3人組がパリの歩道橋?のような場所でただ寄りかかっているだけのシーン。3人がただただダベってるだけで絵になるし、めちゃくちゃカッコいい笑
そんなla haineですが、映画の始まりと終わりがナレーションで挟まれていて、その言葉こそla haineの全てなんじゃないかなと思っています。
「ビルの50階から飛び降りた男の話だ。
そいつは下に落ちながら、自分に言い聞かせた。
“ここまでは大丈夫だ”
“ここまでは大丈夫だ”
“ここまでは大丈夫だ”
だが問題は落下ではなく、着地だ」
今のままではダメだと思いながらも、これから先の不安や全く想像のつかない将来に「ここまでは大丈夫」と自分に言い聞かせて現実逃避をする。これが本当にリアルで、深すぎるなぁ...と感じます。
私も受験生と言う身分ゆえ、この3人が抱える悩みや葛藤が痛いほど理解できます...
長くなりましたが、人の価値観を180度変えてしまうぐらいの力強いメッセージ性や、人の心を奮い立たせてくれる言葉が詰まりに詰まった、そういう作品です。
私にとってla haineは、もはやただの映像作品などではなく、人生そのものです...

『これは崩壊した社会の物語だ。
社会は崩壊しながら少しずつ、絶え間なくメッセージを投げかける』
D

D