ピーター・フォンダ主演でこのタイトルだから、世の中に絶望した若者の無軌道な生活を描いた作品を想像してしまいましたが、180度違った。
実に楽しい娯楽作品でした。
刑務所に慰問へやってきた大御所歌手が、マイクテストのために歌った囚人のピーター・フォンダの曲を盗作して自分の曲にしてしまう。
出所したピーター・フォンダは、自分の曲がラジオから流れてきて盗作されていることを知り、大御所歌手のもとに抗議に訪れるが、その際にもみ合いになって銃が暴発して大御所歌手の足に命中。
大御所歌手のバックには、次期市長選に出馬を目論んでいる警察署長がおり、目の前で起こった発砲事件に激怒。
逃走したピーター・フォンダを全力で追いかける。
逃亡先のボートハウスで、大御所歌手のバックコーラスをしていた女性と親しくなり、一緒に逃亡するのだが・・・
と、ここまでは、ありふれた逃亡サスペンスなのですが、この女性の機転が面白く、曲のマスターテープを入手して、こちらが本物ですとラジオ局を回ってピーター・フォンダを人気者に仕立て上げていく経過が楽しい。
ヒットチャートを調べるため、変装してレコード店に忍び込んだところ、知らぬ間に二人の後ろに人だかりができており、知らぬ間に人気者になっていてサインをねだられるシーンなどは、思わずニコニコしてしまう。
世論はすっかりフォンダのファンになっており、騒動で結婚式をめちゃくちゃにされた者たちもニコニコしている。
10曲録音してLPとして発売することができれば、もっと多くの報酬を得ることができることになった二人は、追手の警察の目を盗みながらレコーディングを続けていく。
これらのエピソードを痛快なカーチェイス場面で繋いでいくのだから飽きが来ない。
クライマックスはさらに目先を変えて、モーターボートの追っかけシーンになるのだから、まさに活動写真の楽しさです!
世論をフォンダ側に向かせる理由付けが若干弱いかなと感じたり、わき腹を撃たれたはずなのに結構元気に動き回れるな・・・などと細かいツッコミは入るものの、これだけ楽しければ言いっこなしかな。
主人公が自暴自棄になって、死に向かって突っ込んでいくのかなと思いきや、これまた意外なハッピー・エンド。
『イージー・ライダー』で幕を開けたアメリカン・ニューシネマの終焉を感じましたね。
主演がどちらも、ピーター・フォンダというのも何かの因果か。
アメリカ映画史の転換点を見るようで、興味深い作品でもあります。