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英二のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

英二(1999年製作の映画)
4.2
8年間の刑期を終えた一匹狼のヤクザ・英二(長渕剛)が、風の噂を頼りに10年前に姿を消した妹のあずさ(若林しほ)を探して熊本へやってきた。
彼は、地元の組織・村川組に客人として厄介になるが、英二の恩人・松次郎(松村達雄)はそれを快く思わなかった。
ある日、村川組と敵対する篠組のヒットマンを撃退した英二の部屋に、村川(高橋長英)の計らいで美しい中国人売春婦・梅花(イ・ナヨン)が送られてきた。
ストイックな英二は梅花を追い返そうとするが、彼女の方も頑として帰ろうとしない。もし何もしないで帰れば、村川から折檻を受けるからだ。
そんな彼女の事情を知った英二は、更に彼女が村川に騙されて中国から連れてこられたことを知って、幸薄い彼女に優しくしてやる。
ところが、ぶっきらぼうだが心優しい英二にいつしか惹かれるようになった梅花が、それから数日後、英二の元へ逃げてきてしまう。
そんな梅花を英二は松次郎の家に匿ってもらうが、彼はそこであずさもまた村川によって梅花と同じ様な目に遭わされていたことを知らされるのだった。
あずさを村川組から逃がした松次郎から、彼女が鹿児島の桜島にいると聞かされた英二。梅花と松次郎と一緒に桜島へ向かった彼は、夫と子供と暮らすあずさと束の間の再会を果たす。
しかしその頃、村川の追手によって梅花が殺されていた。
怒りに震えた英二は、篠組から武器を調達すると、単身、村川組に乗り込み組織を壊滅。
その後、いずこへと流れていくのであった…。
大ヒットドラマ「とんぼ」の続編。
今回、長渕剛がこの映画に込めたかったのは、ふるさとを離れてもいつしか戻ってきてしまう捨てても捨て切れない故郷に対する愛憎だった。
だが公開後のインタビューで長渕氏が言ったように、この映画を通して何を伝えたいのかについての長渕氏と黒土三男氏やスタッフとの意思疎通が充分ではなく、英二やメイホワのラブストーリーや英二が村川に対し復讐しようとする怒りや英二と小阪の絆は描かれているものの、村川の悪辣さや英二やあずさのかつて捨てたふるさとに戻ってきた故郷に対する複雑な愛憎は残念ながら描き切れていない。
でも、英二と常吉の再会、言葉が分からない者同士の英二とメイホワが心を通わせる展開、英二が村川にメイホワを身請けしたいと駆け引きするシーン、英二とメイホワが心をぶつけ合うシーン、クライマックスの英二が村川に自決を迫るシーンなど、キャラクターが気持ちをぶつけ合う濃密なシーンには黒土三男ならではのヒューマニズムがよく描かれているし、長渕剛入魂の格闘シーンなどアクションシーンが楽しめるので、長渕剛のファンなら楽しめる一作です。
ただこの映画を最後に、長渕剛と黒土三男のコンビが終了したのは残念。
英二とメイホワが飛ばした白い落下傘とメイホワがルージュで書いた「我愛尓」が、印象的です。
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