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あるじのkyokoのレビュー・感想・評価

あるじ(1925年製作の映画)
4.0
「ホームドラマ」と謳っているだけあって、ドライヤーにしてはとても分かりやすい作品。
一日中家事育児に追われている妻イダに対して暴君のようにふるまう夫ヴィクトル(失業中で常にイラついている)。精神的に追い詰められ夫の元を離れたイダの代わりに家事をひきうけたマッス(ヴィクトルの乳母)のスパルタ教育によって、ヴィクトルはようやく妻が家族のためにやってきたことがいかに大変なことだったかに気づく……というお話。
辛辣だけど温かみのあるマッスのキャラ(宮崎駿アニメに出てきそう)や、父と子どもたちの関係の描かれ方が丁寧で、伏線の回収でヴィクトルの変化を表現したりと、とても緻密な脚本。
現代でも通じるテーマで、「誰が食わせてやってると思ってるんだ」タイプの夫を持つ奥さま方が観たら、最終的におむつ交換までできるようにまでなったヴィクトルと、「この世界を支えているのは妻であり母親である」というドライヤーの言葉に拍手喝采となるにちがいない。

サプライズ、と言いつつそこからなかなかイダに会わせないマッスのドSぶりがちょっとくどいのがマイナス。

原題「DU SKAL ARE DIN HUSTRU」とはどういう意味なんだろ、と思って調べてみたら「妻を称えよ」みたいな意味だった。タイトルは「あるじ」のほうがいい。
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