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あるじのmozzerのレビュー・感想・評価

あるじ(1925年製作の映画)
4.2
観る度に感動を与えてくれるドライヤー監督作。今回も期待しながら観賞。最後はまた「よかったなあ!」と涙が溢れてきました(笑)

現代映画と比べることはできないけれど、作品が内包しているテーマは現代にも通じる普遍的なものであることも多い。本作は厳しい家父長制の中で生活する家族の物語でしたが、現代も強く残っているこのテーマを100年近く前から既に取り上げていたということに、この監督の先見性を強く感じました。

父親だけが仕事をしてるんじゃない、母親も同じように家庭という「仕事場」で夫や子供達の為にがんばっているんだということをしっかり描きつつ、そこにユーモアを加えることで重い話にならないような演出をする。特に父親の元乳母とのやり取りはよく考えられていたと思います。

壁に向かって反省のポーズなどのフラグが上手く回収されていましたね。特に子供の宿題から母親が、暴君とは虐待と支配いう意味を知る(または再確認する)ことで、自分の置かれている立場を認識するといった演出は見事でした。

最後、夫がきちんと妻の立場を理解して、以前心にあった妻に対する想いを再び思い出すことができたことはよかった。夫にも実は厳しくせざるを得ない理由があったが家族に弱いところは見せられない、頼ることは家父長として好ましくないといった偏見があったため、いつしかイヤミできつい頑固親父になってしまっていたんだろうなあ。

本当にいい映画でした。オススメです!
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