スズランテープ

シルビアのいる街でのスズランテープのレビュー・感想・評価

シルビアのいる街で(2007年製作の映画)
5.0
去年見た旧作の中では5本の指に入るほど好きだった。

これは完全に個人的な楽しみ方なのだが、今作は視聴者が映画内の事柄に自分の経験を心の中で重ね合わせて楽しめることができる映画だと感じた。

ストーリーは美男が美女を尾行すると言う極めてシンプルなものだが、一つ一つのシークエンスが長い。これによって視聴者が入り込む余地が非常に多くなっている。何よりシルビアという人物が象徴的に描かれており、視聴者が過去に出会った最高の美しい体験、美しいものに簡単に置き換えることができる。こう言った経験や物を持つ人は多く、誰もが自分の中にいるシルビアに思いを馳せることができる作品となっている。見る側によって何百、何千通りも奥行きを見せる素敵な作品であると思う。

幻想や過去の記憶にしがみつき、それを深く愛してしまった経験がある人には、ある意味至高の映画体験になり得る作品。

監督はシンプルな物語を提示して、私たちが心の中で組み立てる。この作業が『映画を見てる!』って感じがして快感だった。

マルホランドドライブみたいな楽しみ方ができ、息を呑むほど美しい映像も素晴らしい。後は偶然と想像の一番最初の話とかが好きな人にはお勧めしたい作品。
スズランテープ

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