なんて、不思議な映画体験。
“彼”が誰で何をしているかは何も語られない。ストーリーがない。ゆったりした展開に最初はイライラしたけど、なぜかずっと観ていられる。
いつしか初夏の陽射しを浴びながら、街を散策している気持ちになってくる。
何も起きなくても映画は成立することを体感した感覚です。
彼は、6年前にこの街で出会ったシルビアを探しているらしい。見掛けた女性をシルビアと思い込み、ひたすらストーカーする。そこは気持ち悪い。
あとは、カフェやトリムの停留所のベンチで、女性たちを観察してスケッチする。たったそれだけ。トリムの窓に映る彼女が印象的だった。
これだけ何も起きないと、いろんなことが気になり、見えてくるものもある。
街の人全部が役者かエキストラ?自然さが完璧すぎて怖いぐらい。
人の足音、話し声、街の喧騒がそのまま劇伴になっているのも心地よい。
ストラスブールの街も人も美しくて、もっとこのまま街を眺めていたいな。