arch

タブウのarchのレビュー・感想・評価

タブウ(1931年製作の映画)
4.8
大傑作

ドイツ表現主義の権化だったムルナウの遺作が、こんなにドキュメンタリックで煌々と太陽の照りつける南海のポリネシアで撮影された作品であることに驚愕している。ロバート・フラハティの協力を得ての作品ということで、ある種ムルナウの新境地へのチャレンジングな作品であったのだろうが、完成後直ぐに事故で亡くなってしまったらしい。

物語は悲恋劇。恋に落ちた相手が、部族における聖女に選ばれてしまい、恋愛関係どころか触れることもすらも許されなくなってしまい、2人は駆け落ちするという話。彼女は"タブー"になってしまうのだ。

まず映像について。ポリネシアで取られた実物の映像、本物の海のダイナミズムはやはり本作の見どころのひとつ。全員が一斉に海へと漕ぎ出すカットの素晴らしさは去ることながら、結構船を使わずに遠泳している子供とかがいることに驚く。そもそもの体の作りが違いすぎる感じ。
絶景をバックにした群像の構図は、一見してこれまで衆愚を描き出してきたドイツ表現主義的なものの彼岸に位置するようだ。しかし、その背景が大自然であろうと市街地であろうと本質は変わらないのだ。そう思わされるような2人の恋人を追い詰める苦境。
映像のジャンルは変われど、追い詰められ苦境にて決断を迫られる男の物語としてはこれまでの作品とは変わらない。ひとつ違うとすればその主人公が『民族の祭典』に出てきそうな屈強さを持っていること。ただそれすらも海の前では意味をなさない。

あのラストの無情感。マタヒを思い、別れたにも関わらず、それがきっかけでマタヒは死んでしまう。基本的なロミジュリ劇ではあるが、心に来た。



あとこれ、かなり最古のサメ映画ではなかろうか。
arch

arch