Millet

花とアリスのMilletのネタバレレビュー・内容・結末

花とアリス(2004年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

学生の頃、学校までの1時間の道のりの間でこの映画のサウンドトラックを無限に聴いた。
くすぐったいような春の若い匂いと、まだ冷たい風、朝も暗い頃から家を出て1人歩く。
電車に乗って塞いだ耳に流れ込む唯一の音だった。

この『花とアリス』という作品を心の底から愛してたし、このサントラを聴いてる自分は世界からも愛されてるような気がした。
人生で初めて自分のお金で買った映画のサウンドトラックは『花とアリス』だった。

思い出の詰まりすぎている映画だけど、大人になっても見てみると花は恋愛で頭おかしくなってるし、アリスも初めて恋愛というものを意識して面倒で卑怯な女になっている。


「似合わねー!」
とお互いの制服姿を見て笑いながら登校する無邪気で不安定な2人。

海辺でもみくちゃになって喧嘩しても、帰りのバスでは仲良く首を垂れて眠り、お互いへの思いやりは失っていないのだと思った。
それからも恋や脳の錯覚やらですれ違いを繰り返す花とアリス。それにひたすら振り回される宮本。

文化祭で「喧嘩はダメだよ」と友人から諭される花。
子供の頃、家の庭にたくさんの花が植えられた“花屋敷”に住む引きこもりだった花をバレエ教室に誘ったのはアリスだった、そんなことを思い出しながら宮本にこれまでの嘘を打ち明けて、泣きながら謝罪。
舞台袖で花の帯を直しながら宮本は謝罪を受け入れ告白をする。舞台に出てみれば観客はアリス1人きり。

アリスはモデルの仕事の面接でバレエ『ウヲアイニ・アラベスク』を制服姿で、紙コップとガムテープ作ったトゥシューズで踊り、パンチラで合格。雑誌の表紙を飾った。
その雑誌を花と見て笑い合う。

この紙コップとガムテープでトゥシューズというのには本当に感動した。そして美しかった。

岩井俊二監督は、お気に入りの役者を何度も連続して使うし、クラシックバレエというモチーフも何度も使っている。彩度落とし気味の全体的に暗いシーンに綺麗な光と闇のコントラストを作り出す。
花とアリスはその全てがうまく落とし込められた完璧な映画だったのではないかと思っている。今でも本当に大切な作品だ
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