クロスケ

バトル・ロワイアルのクロスケのレビュー・感想・評価

バトル・ロワイアル(2000年製作の映画)
4.3
【再鑑賞】
平成日本の学生生活とはかけ離れた絶海の孤島で、巷の流行などとはまるで縁の無さそうな殺伐とした少年少女が、拳銃やら斧やら鎌など物騒な代物を手に、スカートを振り乱しながら血まみれで絶命していく。

深作欣二の実質的な遺作は、彼のキャリアの最期を飾るに相応しい、泥臭いアクションを存分に発揮してくれています。代表作『仁義なき戦い』が21世紀に足を踏み入れたばかりの日本映画に、思わぬ形に姿を変えて甦った。そんな印象を受けました。(奇しくも配給は東映。近年は東映以外で撮ることも多かったですが、例の波しぶきのオープニングを最後の深作作品で見れるなんて、往年の映画ファンにはたまらないでしょう。)

この惨劇には場違いな前田亜希の無垢な表情、想いを寄せる男子の肩にもたれかかったまま息絶える栗山千明の孤高の美しさ、そして異常な環境の中で獣の本能に目覚める柴咲コウの研ぎすまされた眼差し。
女優陣のしたたかな佇まいが、この陰惨な物語にあって一際輝いているように思います。彼女たちは監督が向ける強烈なカメラの視線に対して、最高の表情と肉体の躍動をもって返してくれています。

その壮絶な闘いの果てに、深作欣二という稀代の映画作家は戦死を遂げました。
ラストシーン、藤原竜也と前田亜季が連れ立って、都会の雑踏の中に消えたあと、藤原竜也のモノローグと共に「走れ」という言葉で映画は締め括られます。
これが最後の作品ということを知ると、この言葉を深作監督本人のものとして捉えることも許されるでしょう。「俺の屍を越えてゆけ」そんな遺言を若者たちに残したのかもしれないと思うと、非常に感慨深いものがあります。
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