映画「踊子」(1957/清水宏監督/永井荷風原作)を角川シネマ有楽町で鑑賞。良かったです。ゆったりとした静かで穏やかなひと時を過ごせました。
鑑賞前に作品紹介を読んで、どんなにドロドロした激しいイザコザの物語なのかと思っていました。
演出によっては、いくらでも印象の違う作品にも仕上げられたであろうのっぴきならない出来事が次から次へと起きるのですが、全体を通してなんともほのぼのと穏やかな物語でした。
台詞、効果音、BGMまでも音量が常に抑えられて控えめで、いくつかのシーンでは、上映事故かと思うほどの長い無音シーンもありました。
もしも、家で観ていたら音量を上げただろうなあと思いながらも、今回は映画館で鑑賞することで、映画「踊子」は、この抑えた音量で味わう作品なのだろうなあとも感じました。こればかりは映画館で感じられた貴重なこと。
今回の京マチ子映画祭では、浅草を舞台に描かれた作品を何作品か鑑賞しましたが、映画「踊子」での当時の浅草寺の仲見世通り周辺や花やしき等のロケシーンも良くて魅入りました。
書籍「美と破壊の女優京マチ子」の映画「踊子」についての記述部分を読んで、京マチ子さん出演の数々の映画の中でのこの作品の位置づけ考察や、永井荷風原作のこの物語をどのように映画化し売り出そうとしていたのかなどの裏話に触れて理解が深まりました。
浅草のシャンソン座の踊子花枝役を淡島千景さん。花枝の夫山野役を船越英二さん。花枝を頼って田舎から上京し山野と花枝の暮らすアパートの一間に転がり込んで住み始める花枝の妹千代美役を京マチ子さん。三人生活、さてどうなるかの物語。
未だにDVD等のソフト化がされていないという貴重な作品を映画館で鑑賞できて良かったです。