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オズの魔法使の346のレビュー・感想・評価

オズの魔法使(1939年製作の映画)
3.8
子供の頃、観たかと思うけど、細部を失念してたため。改めて見直してみたんだけど…。

いや、すごい。
なにが、すごいって、あの映像美!
同年にあの「風と共に去りぬ」があることにも驚いたけど、それも監督も一緒って!

思うんだけど、本当に美しいものって不変なんだよね。そういった意味では、もう、今の映画と変わらないぐらいか、それ以上の輝きに満ちた時間がそこにあった。
それに、美しさだけじゃなく、竜巻のシーンや、青い猿が空から襲撃してくるシーンの迫力にも驚かされるし。

そりゃ、今の映画のほうが撮影の効率がいいだろうし、予算とかも少なくてすむのかもしれないけど、あの巨大なセットに人がつくるものの優しさがあって、それはそれは美味しかった。

でも、シナリオはどうか。
もしかしたら、今の映画がこの時代に勝っているのはシナリオの部分なのかもしれない。と思ってしまうほど、ご都合主義が多くて。それを様式美と片付けてしまうには、勿体無いぐらいのアイディアと、美しい台詞があって。
それがすごく残念だった。

一番気になったのは、ブリキの男。
心がない状態の彼をどうして、冷たく描けなかったか。ミュージカルだからという理由だとしても、冷たさを描きつつ、可愛い歌に仕上げることはできたんじゃないだろうか。涙も最後の最後で流してくれたほうが効果的だったのに。
それに、現実の人物としてリンクしてるなら、ヒッコリーでのパートで心がないようなシークエンスをどうしてつくってあげなかったのか?(ふたりにはあるのに)

知性、心、勇気、は大事な人のために行動することで生まれるというような美しい道徳を、なんで、もっとしっかり描かないのか。
帰りたいのはわかるし、青い鳥的な終わり方でいいんだけど、彼女が、その感情に辿り着くには、描かれていないものが多すぎないか?

あと、魔女の倒し方が雑。
魔女の目的もよくみえないし。
魔女がなぜ犬に固執したのかも理由としてなさすぎる(現実とリンクしてるのはわかるけど、オズの世界での理由も欲しかった)
ゼウスエクスマキナ的な最強の北の魔女の存在も、あまりにもご都合主義だし、全体的に物語として緩急が弱くて、冗長気味。
などなど、色々と引っかかることが多くて…。

ただ、この不満の全ては、自分自身が今の映画の手法に毒されているという見方もできるんだけど…。

でも、これだけは自信を持って言えます。この映画のMVPは、トトです!
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