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みじかくも美しく燃えのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

みじかくも美しく燃え(1967年製作の映画)
4.3
愛しあう二人がひたすら美しく、先の見えないその瞬間だけに生きて輝く。邦題どおりの恋愛映画、実話です。端から見れば悲恋になるのでしょうが、死の瞬間まで笑顔を見せた二人は幸せだったのだと、伯爵出身の中尉とサーカスの綱渡りの少女の逃避行を美しい映像と美しい劇伴で弔った監督のあたたかい眼差しすごく好きです。

恋とは、こんなにも全てを捨て去れるものなのか。

中尉には二人のまだ幼い子供と伯爵家の妻がいて、少女は人気ある芸人。

中尉の友人が探しにやってきて、少女にも身を引くように説得する内容は誰もが納得するもの。それでも二人は二人でいることを選びます。

とにかく二人が美しいんです。森や川や草原で、二人だけの時を過ごす。蜂の羽音、小鳥のさえずり、蝶を軽やかに追う少女を目を細めて見つめる中尉。

しかし軍服を脱ぎ、妻の家の肩書きを失った男にできることは一つもない。少女の服の裾は汚れ、髪は乱れ、食べ物を買うこともできず、森の果実や草を摘んで生き延びる。それでも二人は一緒にいたい。

破滅するしかなくても、愚かであっても、恋という美しい瞬間を生き続けた二人。二人でいたい理由を他のどこにも置かなかった。軍隊がいやだとか、妻の実家がプレッシャーだとか、もう戻れないとか、描かなかったのもよかったです。

原題「エルヴィラ・マディガン」は少女の名前で、実物の画像はエキゾチックで幼くみえる美女でした。逆にエルヴィラ役のピア・デゲルマルクは大人っぽくみえるけど、18歳。カンヌで最優秀女優賞を受賞しています。

中尉役の容姿端麗のトミー・ベルグレンの瞳がきれいで優しくて、どこかで見たことのあるまなざしだと思ったら、のん(能年玲奈)の純粋な瞳に似ていました。

音楽はモーツァルトの「ピアノ協奏曲21番」と、ヴィヴァルディの「四季」が、美しい瞬間を永遠に刻みました。
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