矢吹

僕の大事なコレクションの矢吹のレビュー・感想・評価

僕の大事なコレクション(2005年製作の映画)
4.1
全ては解明された。
僕の大事なコレクション。

本を常に持っている男がいる、図書館の前にいつも座っている、彼はこの村の誰よりも本を借りている。
彼は文字を読むことができない。
しかし彼は、中身を想像するのが楽しいのだと言っていたのさ。

ウェスアンダーソン好きなので、大好きだった。
まさに、硬い、画面。静止画の時間の方が長いようなスタイルでありながら、東欧の雰囲気満点の音楽、ケルトっぽさとオルタナの中間というか。
ロードムービーの、関係性の変化のドラマ。
走る車と、壮大な自然と、時計を頼らない時間の流れを感じる文化。
そして、キャラクターの変人バトル。
オレンジ将棋です。1人が変なことやったら、次にちがう奴が変なことして、またその一手に対して斜め上の変なことをする違う奴がいる。
大真面目に。面白すぎてゾクゾクする。
最高に好みでした。最好。
犬もいるよ。殴っちゃダメに決まってる。

物語の構造も気持ち悪くて素晴らしい。
本来は書簡らしいのだが、納得の、文章スタイル。基本的には。
サフランフォアとは誰なのかという謎が、オープニングで3度、使われるサフランフォアという単語に、踊らされるのだ。
これはかなり特殊な例だけど、一種叙述トリックでいいのかな。軽めの。楽しいです。
まっすぐ見ていても、話者が判明していく過程はやはり、昔からある場所なりの、良さよ。

章立てもめっちゃいい。物語の変化がわかりやすい。なにせ、この作品自体が、前半後半で、コロコロと、めっちゃくちゃ、雰囲気変わるからこそ。
あんな悲しい死と、あんなに面白いシーンが、混在している映画、あんまり、無いと思うね。

Everything is eliminated
どうして集めるのか、忘れないために。
過去の光が今の全てを照らしてくれる。
その光は特に裏表をあべこべにしてしまうほど、強烈すぎることもある。
だからこそ、ちゃんと見ることの大切さ。
1942年に起きたこと。や、歴史から目を逸らさないこと。知ること、覚えること、逃げないこと、忘れないこと。
こんなに素敵なメッセージのある映画だと思ってなかった。

戦争は終わったのか、という質問に対しては、
本を清めるためのキスで答えるのだ。

人は、たくさんのもの、色々なものを、集めて、交換して、分け与えて、1人じゃなくなるわけなんです。
1人で過ごす夜にでも、実は1人じゃないと思い出せるのですね。ここまで1人で生きてきたわけじゃなかったと思わせられちゃうわけですね。
先祖も、子孫も、あったりして、あの人から借りてた本があったりして、
だから、1人じゃないのは、
当たり前なのです。残念ながら。
だから、だから、寂しいんだけど。
地球は一つの電導体だから。
お願いだから、これ以上、
私を寂しく、させないでよね。
たまにここに立ち止まらせてくれる映画に
たまに出会えるのが、好きで、いろんなことを忘れてしまうことをまた、思い出してしまう。
僕の全てとは言わないが、
たくさんのことを照らしてくれた。

他人の思いを想う話である。
なぜなら、僕が、そう感じたから。
矢吹

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