天知茂の吸血鬼、眼福の至りでございます。もう少し上背があって脚が長ければいうことなしですが、まぁ、お顔だけでもね、素晴らしいものがございます。
現代に甦る天草四郎の復讐モノといえば真っ先に『魔界転生』を思い浮かべるわけですが、本作は映画におけるその嚆矢ではないか。300年の時を経て、復讐者はすっかり洋装の上油絵なんか嗜んだりして、武器はフェンシングの剣ときた。変われば変わるものです。
吸血鬼の手下に『亡霊怪猫屋敷』の白髪婆が出てきたのはご愛嬌か。この婆に筋肉マッチョに小人にと、なんだかのちの鬼太郎や怪物くんのキャラクターを彷彿とさせます。
立ち回りは今見るともはやコントです。笑ってしまう。ところが突然天知茂が後ろざまにぴょんぴょんぴょんと階段を跳ねたりする。CGにすっかり慣れた目が、おおっとのけぞるんですから、大したものです。サービス精神の賜物です。見せ場を心得ている。
被写体と油絵を並べる絵に、ヒッチコックの『めまい』を思い出しました。絵もそうですが、カメラワークもかなりモダン。
安心して見られる娯楽=映画です。