Ricola

狂恋のRicolaのレビュー・感想・評価

狂恋(1947年製作の映画)
3.4
実際にパートナーであったという、ジャン・ギャバンとマレーネ・ディートリッヒのコンビが拝めただけでも、この作品を観る価値はあったと思う。

粗野なギャバンと妖艶で孤独なディートリッヒの競演ぶりは素晴らしかったが、ストーリー展開の陳腐さやグダグダ感は正直否めなかった。


この作品は、ダニエル・ジェランのデビュー作でもある。
彼はディートリッヒの美しさに魅了される若き教師を演じている。
ただその彼はあまり存在感がなかったため、ストーリー展開においても付け焼き刃的な要素となってしまっていたのが残念に感じた。

靴ならぬブローチでブランシュ(マレーネ・ディートリッヒ)との接点を得るマルタン(ジャン・ギャバン)。
彼らの出会いこそ素敵で、二人の自然体の演技もよかった。

ブランシュのいる世界である自室のクローゼットの鏡で身なりを整え、そのクローゼットの扉を閉め画面が暗くなると、熱気のこもったボクシングの会場へとショットが切り替わる。
そこで、交わるはずのなかった二人が出会うのである…。

ブランシュと彼女のおじのお店で鳥が売られているのも、ストーリーのキーだろう。
売り物となっている小鳥たちは、鳥籠という狭い世界に閉じ込められている。
それはおそらく、偏見の目や自分の虚栄心によって自分を狭い世界に閉じ込めている、ブランシュ自身を示しているのだろう。

ギャバンとディートリッヒのお似合いっぷりに心が踊るし、違うタイプの男女が惹かれ合う様子に切なさも感じられた。
ただやはり、説得力があまりない話の運びやオチの弱さによって、作品全体がぼやけてしまっていたようだった。
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