とむ

スモークのとむのレビュー・感想・評価

スモーク(1995年製作の映画)
4.5
言葉で聞いていた物語を映像「だけ」で観るあの効果は何なんだろう。
名状し難い不思議な感情に覆われた。
最後の最後の「バタン」でそれが現実にあったことであるように感じさせてしまう手腕も、とにかく見事だなぁ、と。

件のシーンやお金を持って行っちゃった男の子に対していくらでも厳しい見せ方はできるはずなんだけど、そこら辺全然説教くさくなくていいなぁ。
こういうのが映画だと思う。


全編通して、さり気ない表現がとてもうまい作品だなと思った。
前述の最後の音とか、
黒人の少年がアパートに帰って来たとき、アパートの外で鳴っている音とか、
父親に名を告白した時に流れている音であるとか…
妙に印象に残るんだなぁ。


ただ淡々と、喋りがメインで物語が進んで行くんだけど、それがとても印象的。
映画って映像で説明すべき表現なことが大前提だとおもうんだけど、
タランティーノとかこの映画とか、言葉を司ることは間違いないんだけど、
そこになんでかエモーションを掻き立てるお芝居を乗せてくるからすごく上手。


登場するキャラクターが何かしらの欠損を抱えているのも良い。
腕であるとか、眼であるとか、人であるとか、金であるとか、
欠損とはそれ即ち「痛み」でもあるから。

痛みを知ってる人は優しくなれるんじゃないかなっていうのが、この映画を観た僕の印象。
とむ

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