曇天

ダークナイトの曇天のレビュー・感想・評価

ダークナイト(2008年製作の映画)
4.5
忘れた頃に観るダークナイトは良い。改めて傑作やと理解。

グラフィックノベルを映像で観ている感覚。前半はジョーカーが何をしでかすか分からなくて緊張しっぱなし。ジョーカーのパーティ乱入直前の本部長暗殺などをクロスカットさせるシーンは凄い。

次々出されるジョーカーの難題に警察とバットマンと市民が翻弄されていくお話。ジョーカーは市民に対して、自分の大事なものと正義を天秤にかけさせることで人の弱さを暴こうとしていくんだけど、ハービーが「ジョーカーはただの狂犬」と言うように、悪人を決めこめばジョーカーに便乗して旨みを得ることもできてしまう。善良であろうとするほど守るものが増えて、弱みにつけこまれてジョーカーに協力してしまう構造がある。こんな奴いたら将来が不安すぎる。
そんな風にジョーカーの甘い誘いで正義を達成出来なかった人々を今度はトゥーフェイスが断罪して廻るという試練の二段構え。もうやってられません。

最初から首尾一貫してハービーという正義の象徴をマフィアから守るためにバットマンや警察が奮闘する。自然発生する出どころ不明の漠然とした「犯罪」と戦ってるっていうよくわからん状況で、頼れるのがハービーの威光だけで、行政が存在しないかのような立ち振る舞いにリアリティが薄いという違和感があるが、一個の村社会として見るとありそうな話。自治意識が強いといわれるアメリカのどこかの町に住めばその空気感とか掴みやすいのかもしれない。自分か集団どちらが大事かという問題は、ドラマ「ウォーキング・デッド」の流行ともリンクする気がしてて、つまり決断を迫られる立場に立ったらどうすべきかを、普段から思考してたりするんじゃないかなーと。大統領選など自分の意思で大事が決まって、どっちにつくかで今後の生活に影響が出るイベントもあったりするのでね。

宇多丸さんが言ってたのかな? 脱獄して車から顔出すジョーカーが活き活きとしてて応援したくなるとか。わかります。
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