ぽんぬふ

女ばかりの夜のぽんぬふのレビュー・感想・評価

女ばかりの夜(1961年製作の映画)
4.5
田中絹代5本観た中ではベストだったかも。
『恋文』から、田中絹代映画の乗り物は、自分の力で人生を動かすことの象徴だった。最初の勤め先で配達を頼まれたときに自転車に乗る場面が、改めて結婚を申し込まれる朝に乗っている自転車へ。その場面の終わりは橋の上で、その下を電車が奥から手前へ通過する。背景を通過する電車と自動車は、どうにもできない社会や世間を象徴する。はじめて結婚の話題が出たとき、男が自転車を押し、女は橋をわたって画面奥へ去る。橋も画面奥に去る女も田中絹代映画の頻出モチーフだったのだけど、もっともドラマに溶け込んだ演出になっているかも。初期から演出家としてとても丁寧なタイプだったけど、この頃は肝心なところをこそ省略する、ちょっとヨーロッパ映画みたいな手ぎわが出てきて、それも『お吟さま』よりさらに洗練されている印象。かと思えば、たとえば旦那を誘惑する場面なんかでは、女優の力量に任せるような長回しも使う。
最後の最後の場面はあってもなくてもいいけど。
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