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アレクサンダー大王のしのレビュー・感想・評価

アレクサンダー大王(1980年製作の映画)
4.1
アンゲロプロスにおいて、立ち尽くす群衆というイメージは繰り返し描かれてきたものだが、今回は特にギリシャの政治的テーマと呼応していたと思う。広場が政治的劇場となり、アレクサンダー大王を始めとした役者が自らの役を演じることで場が動き、数的には何倍もある大衆は基本的に空白を埋めるだけでありそこで起こる"事件"のトリガーとはなり得ない。唯一若さを持った少年にのみ終盤にかけて役が与えられる。

アンゲロプロスで一番通しで見るのがキツイ作品なんかじゃないかと個人的には思う。人はたしかにたくさん出てくるけど(上述した理由からか)そこに人間的な生気はなく、見てるこっちが狼狽えてしまう。カメラワークもカットもどこか投げやりで、元々アンゲロプロスにあった反アメリカ(資本主義)的な態度と、社会主義への懐疑も相まって着地点を見失って浮遊しているように感じられる。
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