hasse

汚名のhasseのレビュー・感想・評価

汚名(1946年製作の映画)
4.0
演出5
演技4
脚本3
撮影4
音楽4
技術4
好み4
インスピレーション4

イングリッド・バーグマンに魅せられてパート3。前半60分の潜入捜査開始パートはかなり退屈。二人のラブストーリーも突然すぎて面食らう。サスペンス要素は皆無なので、ケイリー・グラントかバーグマンのファンでなければだいぶしんどいだろう。私は、ボーダーTシャツバーグマンの酔っ払い演技と、バーグマンとグラントの過剰な、好戦的にすら見えてくるキスシーンという貴重な映像をぼーっと堪能していたが。

パーティでワインセラーを隠密調査するあたりからようやくサスペンス開始。
白眉はバーグマンが毒を盛られたことに気づくが時や既に遅し、セバスチャンと母親が立ってこちらをじっと見つめるバーグマンの主観ショット。眩暈とともに二人の姿は黒い影となり、バーグマンににじり寄ってくる。
また、ラストのバーグマン救出劇が素晴らしい。グラントがバーグマンをいかに敵陣から救い出すかのサスペンスを描くかと思いきや、それはすぐに、ネオナチらがセバスチャンの失態(スパイを招き入れてしまったこと)に気付き、セバスチャンがそれをいかに取り繕うかのサスペンスへと切り替わる。グラントらが階段を下りてくるのを、三人ののネオナチらが覚めきった眼差しで見つめている、ヒリヒリとした画面。階段を一歩おりるたびにセバスチャンの「詰み」が濃厚になっていく様が印象的である。

また、セバスチャンの母親の異常な存在感が気になるが、これはあえて異常に描いていると思う。セバスチャンはそれなりの社会的地位のある中年男性だが、彼の意志決定には母親が大きく関与している。(特に顕著なのは、バーグマンをすぐ殺すと主張するセバスチャンの意見を退け、薬でじわじわ殺すと言って、余裕綽々の態度でたばこをふかしながら画面の前面に現れ出てくるショット)
バーグマンが父親が敵国のスパイであると判った瞬間に縁を切ったのに対し、セバスチャンは母親に依存し、彼女が崇拝するナチズムに自身もどっぷり浸かっている。1946年という戦後すぐに制作されたこの映画で、親=前世代=戦争の世代と訣別する者、引きずる者が対比的に描かれる。そして、訣別する者(バーグマン)は、(グラントによって半ば強制的ではあるが)自らの道をを自らの意志決定によって選びとるのだ。

バーグマンの美しさ、巧みな演技は最高だった。グラントが大好きでたまらなく、苦手な料理も率先してチャレンジし「結婚ってのも悪くないかもね」と勝手に浮き足立つ姿が可愛い。その反面、グラントに冷たくされると片方の口角をちょいとあげたシニカルな笑みを浮かべる表情も美しく、どこかもの悲しい。

グラントはイーサン・ハント並みにデキるエージェント感が出てるが、なんかわりとトロいような。(ワイン割ったり、待ち合わせに現れないバーグマンを5日も放置したり)
hasse

hasse