半兵衛

兄弟仁義 逆縁の盃の半兵衛のレビュー・感想・評価

兄弟仁義 逆縁の盃(1968年製作の映画)
4.0
『瞼の母』と任侠映画の見事な融合。鈴木則文監督のお客が反応するポイントをわきまえた演出と笠原和夫の屈強な構造の脚本、『仁義なき戦い』シリーズで名を馳せた吉田貞次の流麗なカメラが単なる娯楽映画の枠を越えて母恋しの想いというメッセージが胸にくる名作に昇華させている。

そしてメインドラマである母子のドラマを展開する北島三郎と三益愛子の熱演に圧倒される、三益が母親だと知ったあとに出会う二人の場面は本家の『瞼の母』にも負けていない名シーン。

それでいて冒頭の殴り込みシーンをはじめ出てくるアクションの熱量が高いのも最高で、北島と義兄弟の仲になる若山富三郎の存在が更にアクション要素を盛り上げる。ラス前における若山富三郎のボロボロになりながらの殺陣の無双ぶりは必見、こういうのを成立できるのは若山富三郎以外は難しいかも。あと遠藤辰雄演じる酔いどれの海洋研究員と北島三郎の軽妙なやりとりが素晴らしく、ストレートな任侠映画の展開で緊張しているお客をリラックスさせる。

北島三郎と三益のやりとりをはじめ随所に登場する長回し(ローアングルも出てくる)、ラストの敵地に殴り込みした主人公が想い人の前に到達する展開に鈴木の師匠・加藤泰の影響を感じさせてニヤリとしてしまう。

ちなみにこの映画では工場が流した廃液が原因で魚が取れなくなりそれを揉み消すために悪いヤクザと結託しているという公害問題が表面化した時期らしい設定になっているが、企業と政治家、やくざの歴史を考えると実際こういうことが起きていたのではないかと思ってしまう。そう考えるとこの映画は妙にリアルな肌触りを感じる。
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