針

バトルランナーの針のレビュー・感想・評価

バトルランナー(1987年製作の映画)
3.8
舞台は2017年の近未来(!)のアメリカ。軍事警察みたいなのに所属しているシュワちゃんは命令を無視して正義を選んだことで、「ランニング・マン」という殺人テレビショーに出演させられるハメになる。

あとはシュワちゃんが自慢の肉体ですべてを破壊し、腐った社会に鉄槌を下す快作アクション映画。それ以上でもそれ以下でもないんだけど普通に楽しかったです。
殺人ショー番組を見て鬱憤を晴らしながら、自分を社会正義の側だと悦に浸っている俗悪な視聴者像がいいですねー。『ゼイリブ』とか『ヴィデオドローム』とかもそうだけど、80年代ってこの手のテレビ論とかメディア論が盛り上がった時期なんでしょうか。

個人的には、シュワちゃんをハメるために冒頭のヘリコプターのシーンをテレビ局が編集して、あたかも彼が殺人鬼であるかのように見せかけるくだりが面白かったです。まずそもそも警察の作戦行動中のヘリを撮影してるはずがないから、映像素材がないでしょう! というツッコミ。あとはこの編集作業って、全然別の映像を切り張りして音声を挿入することで、一本の恣意的な「物語」として仕立てるという、映画の製作とまったく同じことをやってるんですよねー。このへん意識的かどうかは分からないけど、ギャグの形で観てるこちらをチクッと刺してくる趣向と取れなくもないかな。

あとはあんなクソ長いトンネルを通ってたどり着いた先がどこなのかよく分からない(笑)。地下っぽいけどそれにしては戻ってくるのに時間かからなさすぎな気が。途中に味方の秘密基地があるというのも無茶な設定なんだけどそのへんはまぁどうでもいいかなと。

その他。シュワちゃんが気の利いた名ゼリフをいっぱい連発します。あとは結局最後に一番モノを言うのは、正義の心と圧倒的な暴力であるという、この世の真理を教えてくれる映画でもありますね。私たちも作中の観客同様、移り気で俗悪な視聴者としてシュワちゃんの姿に快哉を叫びながら観るのが吉。

「ぜひとも映画館で観るべき映画」みたいな言い方があるけど、この作品はテーマ&規模的に「ぜひともテレビで観るべき映画」と無理やり言えなくもないかなーとかテキトーなことを思ったりしました📺。そうなると音響はちょっと惜しいけどね。
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