山内賢、和泉雅子兄妹に松原智恵子の夜間高校同級生その他適材適所の配役の妙があり、勿論、中島丈博の抒情豊かな脚本と若杉光夫監督の誠実な演出が合わさって、貧困乍らも希望を抱く青年達の成長を追った傑作。川島雄三「青べか物語」当時の漁村浦安の風景に現在を重ね合わせると驚異的だが、高度経済成長初期の面影がくっきり現れた、高校進学が如何に重大かは当時を知る私は身に染みて理解出来る。進学叶わなかった従兄が、人生に大きな損失を被った事実を知っている。それだけに和泉の苦悩と迷走は、「キューポラの街」を超えているし、「非行少女」に匹敵する名演を披露したが、山内、松原も夜間進学前はやはり同様だったろう。
