masayaan

ザ・クラッカー/真夜中のアウトローのmasayaanのレビュー・感想・評価

3.0
抜かりなく濡れた夜のアスファルト。台詞らしい台詞もなく、淡々と(かつ、妙に具体的に、冗長なまでに具体的に)進行する盗みの現場。重く沈んだ暗闇の中で躍動する男たちが、これまた妙に凝った構図で淡々と切り取られる。まともなハッピーエンドなど期待できる訳もないこんなオープニングに、果たしてこれが、今後ヒット作を連発することになる作家の劇場デビュー作なのだろうかという疑問が頭をもたげる。もちろん、悪い意味ではない。いわゆる「若さ」みたいなものが全くないことの驚きである。

題材からして、10年のお勤めを終え、人生の師を(事実上)獄中で失う羽目になった一匹狼の金庫破りが、ハッピーに終わるわけなどない気休めのファミリー・メロドラマを演じつつ、「最後の大仕事」を遂行するという、不吉な物語だ。渋すぎるのではないか。あるいは、まったくの無内容だと言ってもいい。実際、終盤に向かうまでのテンポはいささか歯切れが悪く、「最後の大仕事の後の、本当の最後の大仕事」が撮りたかっただけなんじゃないかというくらい、終盤の中では「出陣」を待ちわびる車のショットだけが出来すぎなくらい決まっている。

素直に『ヒート』観ろ、という話なのだが、その尺の長さにビビッてちょっと遠回り。『コラテラル』の衝撃が、今も忘れられず。点数は辛めです。
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