yksijoki

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのyksijokiのレビュー・感想・評価

3.7
とにかく音楽がいい。緊張感を煽るサウンドと不協和音が素晴らしかった。冒頭のながーい掘削シーンといい、石油を掘るシーンとこの劇伴のマッチ具合が本当に気味悪いぐらいですごく良かった。レディオヘッドのギタリストであるジョニー・グリーンウッドがサントラだと聞いて納得というか、ある種のホラー感といいおかしなBPMといい異常に速くなるテンポといい本当に素晴らしかった。クラシカルで重厚な弦楽器の感じと重苦しいテイストとがマッチしていて最初ハンスジマー?と思ったぐらい。不吉なサウンドと写っている映像とのミスマッチ具合が素晴らしく不吉で良かった。

全体のストーリーの重厚さと男臭いテイストと無骨すぎるところは150分ずっと続いていて本当にマーティンスコセッシが描くギャング映画かってくらいの一貫性があった。石油のためなら人を人とも思わないダニエルの圧倒的な狂気っぷりが終盤にかけてどんどんにじみ出てきていく様が、冒頭の映像と噛み合ってきて非常にカタルシスになっていた。

キャストのダニエル役のダニエル・デイ=ルイスとポールダノが演じるイーライとの関係性もたまらなかった。イーライの新興宗教っぷりといいあのお説教の感じといい本当にイライラするしラストの2人のもはや狂気と言える対話は素晴らしかった。ダニエルも顔から苦労がにじみ出ている感じというか心を失った男の顔がとんでもなく絶妙。どちらも同じ取り憑かれ方をしているしそういう意味では似た者同士だったのかもしれない。だからこそ相手の本質が見えるというか嘘つき同士だからこそ見えている部分があったのかも。

あとは息子との関係性はなんか救いようがないというか辛さがあった。ある事故が起こってからの2人の関係性と最後の対話シーンが救いようのなさとダニエル本人の本心ではない感じが伝わってきて非常に良かった。

終盤ダニエルの人生はしっかりと破滅に向かっていく中で全てを投げ打ってでも石油にたどり着こうとする彼自身の幸せとはなんだったのかとなっていく。ラストに彼が言い放つセリフがちゃんと響くのは非常に長い時間重厚なものを見せられてるからこそだなという気がしていて、そこへのこだわりがすごいなと思った。
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