湯っ子

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドの湯っ子のレビュー・感想・評価

4.0
アメリカ20世紀初頭のアメリカ、男手ひとつで息子を育てながら、無一文から石油王にのし上がり、破滅していく男の物語です。

タイトルの意味は、「そこに血があるはずだ」という意味で、ここで言う「血」とは、血脈、石油、キリスト教を表しているそうです。

ある男の人生、しかも壮絶な人生を見せつけられて、何を語れるだろう?という気持ちです。
私だけの考察では、到底理解しきれないので、解説を色々読みました。
主な登場人物は、主人公のダニエル、息子のH.W、カルト神父のイーライの3人のみ。ダニエルは富、息子は家族、神父は宗教(アメリカにおけるキリスト教)の象徴だそうです。
この映画では、その3つの恐ろしい部分を描いているように感じます。
この作品で、主演男優賞を受賞した名優ダニエル・デイ・ルイスが凄いのは言わずもがな…
ポール・ダノの静かながら、内にマグマを秘めているような佇まい、そしてあたかも噴火するような様子から、一気に引き込まれました。

音楽は、イギリスのロックバンド、レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドが担当しています。終始不穏で胸がざわつくようなクラシック音楽で、「ヘレディタリー」の音楽を思わせました(ヘレディタリーの方が後出です)。
この音楽からも、なるほどと思ったのは、PTA監督は、この映画を一種のホラー映画と捉えているとのこと。
ひとりの男の破滅を描いていますが、そこには教訓もカタルシスも、わかりやすい物語もない。ただ、彼の人生がある。そう感じました。

列車の中で、乳飲み児の息子と見つめ合うシーン、息子が去った後、少年の頃の息子との何気ない日常がフラッシュバックするシーンを思い出すと涙が出ます。
湯っ子

湯っ子