KEKEKE

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのKEKEKEのレビュー・感想・評価

5.0
- 間違いなくマイオールタイムベストのひとつになった
- こんなんみたら不感症になってしまう
- そもそも傑出した才能を持つ監督と演者と音楽家が荒野の上で攪拌され産まれた空前絶後の化け物映画!
- どっから触れたらいいのかわからないほど全てのクオリティが異次元

- 劇伴はレディオヘッドのジョニーグリーンウッドで、ウィキを見る限りこの映画が映画音楽としては初仕事?ありえん!
- エクスペリメンタルな音楽は恐ろしさと繊細さに満ちていて、サントラを聞く限りホラー映画のそれ
- 特に序盤、主人公の成り上がりに合わせて音楽も並行して盛り上がる場面 導入らしく管楽器のチューニングの様な音が長尺で鳴り響き、この物語が辿る道程の結末を観客に指し示す
- もし仮に自分がオーケストラを観に行ったとして、さあこれから演奏が始まりますよというタイミングでこのチューニングを聞かされたら、その瞬間確実に絶望してしまうだろう
- この楽団は何かがおかしい おそらくとうの昔に崩壊しているし、組織として機能不全に陥っている 美しく並べられた楽器はその内部で腐った何かを覆い隠すためのものに違いない
- そのワンシーンで私たちを絶望させ、その後も一切の妥協なく地獄へと引き摺られていく
- その映画のタイトルがゼアウィルビーブラッドだ、ハッピーエンドで終わるはずが無い
- この手法って最近のホラー映画でよく使われている気がするけど、当時どうだったんだろ

- ある意味でこの劇伴は、「語らない」映画を観客に提示する際の導線として機能していると言ってもいい
- オープニングに関しては数十分間殆どセリフらしいものは無く、主人公の成功と共に漠然とした不安と期待だけが積み上げられるだけの時間が続く
- そうした時間はともすれば観客を置き去りにする危険性を孕むが、劇伴が機能している限り観客は監督が望んだ方向に意識を向けられる
- これこそひとつの総合芸術として誇れる作品であるし、相当な合議を経て完成したに違いない

- そして何より衝撃的だったのは、ダニエル・デイ=ルイスの人間離れした演技だ
- 私は彼の出演する映画は初見で、唯一アカデミー賞主演男優賞*3を受賞しているレジェンドだということも後から知った
- 狂気的なまでの演技というのはよくある触れ込みだけれど、私の経験では彼の演技が間違いなく一番の狂気だった
- 人間とはそもそもこうなのだという紛れもない事実を、白昼の荒野に引き摺り出すような演技 彼は本物の狂気を纏い、画面の中でフィクションを超越してしまった

- ポールダノも負けず劣らず凄かった ダニエルがビジネスの狂気だとすれば彼は信仰の狂気
- 懺悔のシーンは、2人の実力の結晶の爆発で、怒りの表出と蓄積、そのきっかけ、譲れないものに対する執念と決意の表明を生身の演技一つで表現した
- 神技だ
- 子役の子も、そこにいるとしか言いようがない自然さ、この子は今どこで何してんだろう

- オイル 太古の地球、死屍累々の蓄積からなる人類への恵み
- 数千万の時を超え地表に空いた穴からそれが吹き出すとき、恩恵とともにもたらされるのはまた次の屍
- 体液がごとく吹き出すオイルは人間の狂気に引火し延焼
- 作中でプレインビューが繰り返す様に、怒りは長い時間をかけて蓄積しやがて狂気として顕現する
- オイルと流血、ビジネスと信仰、孤独と血縁
- あらゆるテーマが融合し、地球から人間へと帰結する
- 終わりの始まりはいつだった?初めて金を採掘したときか、息子をひろったときか、地球に生物が誕生した瞬間か
- 今後これを超える作品に出会えるだろうか 不安

- 今好きな映画を劇場で観る権利があるならこれを上映してほしいと強く思う
- これ観てからリコリスピザ見たら混乱して死ぬだろうな
- でももしかするとポールトーマスアンダーソンはずっとビジネスの話をしているのかもしれない
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