リッキー

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのリッキーのレビュー・感想・評価

4.0
1001本目。190416
『いずれ、血で染まる』
邦題にするとこんなニュアンスですかね。
本作は圧倒的なダニエル·デイ ルイスの存在感とダイナミックな音楽に尽きます!

まずは冒頭から驚かされます。最初の15分間くらいは全く台詞がありません。ここでくじけてしまう人も多いのではないでしょうか。
会話が始まってからも、彼の台詞のリズムに違和感を覚えます。これは当時の話し方を再現しているらしいです。さすがダニエルと感服してしまいます。

舞台は19世紀末期、主人公のダニエル(ダニエル·デイ ルイス)は金の発掘をしていましたが、後に石油を掘り始めます。彼の事業は成功し、どんどん大きく展開させていきますが、彼の終着点が見えてきません。ダニエルが何のために石油を掘り当てているのかわからないのです。石油で稼いだ富で贅沢しているようにも見えず、楽しんでいるような姿も見受けられません。
家族のためということでもなさそうです。新しい油田をゲットしたら、満足するという「コレクター」に近い感覚なのでしょうか。

彼は誰も信用していませんが、家族に対する愛情はかろうじてあるようです。
彼は孤児を引き取り、自分の息子として育て、いずれは自分の後継者になるよう教育しますが、不慮の事故により、息子は聴力を失ってしまいます。同時期に実弟だと名乗る男が現れ、息子の代わりに重用することになりますが、彼なりに身内を大切にしていることがわかります。
彼の人格はどのように創られたのでしょうか。彼の生い立ちやこれまでの人生があまりわからないため、謎めいていますが、いずれにせよ幸せとは縁遠かったのではないでしょうか。

重要な登場人物に、牧師がいますが、ダニエルは彼に対して終始疑念を抱いています。神をも信じぬダニエルは彼を「神の化身」とまつりあげることによって、逆に追い込んでいきます。ダニエルは不遇な時代に、神にすがることが多々あったのでしょうか。

若い頃、救いの手を差し伸べることなく沈黙をつらぬく神に苛立ちを覚えたダニエルが、神とは決別した、というようなエピソードがあったらわかりやすかったのですが…。

内容は暗く重苦しいですが、ダニエル·デイ=ルイスの演技には心奪われます。
リッキー

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